一般人だと誤解する特許事務所の中の人の会話「クレームが嬉しい?」

例えば、上司との間でこんな会話があったら。

上司「今度、このクライアントを担当して」
あなた「はい、分かりました。」
上司「このクライアントからは、いつもクレームが来るんだよね」
あなた「いつも?」
上司「うん、打合せしたら、だいたいすぐクレームが来るよ」

この会話を聞いたら、特許に不慣れな人なら
「え~、いつも文句を言われるの?」
と思ってしまうかもしれません。

クレームと言えば「文句」や「苦情」の意味ですね。お客さんからのご指摘は、業務の改善に必要不可欠ですので、有難いことであるのは言うまでもありません。しかし、いつも苦情を呈されるとなると・・・ですね。

しかし、特許事務所の世界では、全く心配する必要はありません。むしろ、大変有難いクライアントだと、うれしくなるくらいです。

特許業界には、ひとたび聞くと一般人さんには「え?」と思われてしまうような言葉があります。その代表格が「クレーム」です。

特許の世界で「クレーム(Claim)」というと、「請求項」のことを意味します。特許出願の書類のひとつに、権利化したい発明の内容を記載した「請求項」を記述した書面があります。 「請求項」は、簡単に言うと、「私はこんな発明をしましたよ!ここまでは私の特許だよ!」と言う範囲を明らかにする記載項目のことです。

この請求項のことを英語で「クレーム(Claim)」と呼んでいるんです。

それゆえ、特許事務所ではこんな会話もよく聞かれます。

「クライアントからクレームが届いた」
→ 意味「特許でカバーしたい権利範囲の文案が届いた」

「難しいクレームですね」
→ 意味「権利範囲を説明する文章が複雑で分かりづらいですね」

「良いクレームですね」
→ 意味「請求項の文章が発明をきちんと保護できる様にまとまっていますね」

「クレームを頂けますか?」
→ 意味「特許で守りたい権利範囲の文案を頂けますか?」

「クライアントからクレームが届いて助かる」
→ 意味「クライアントが自ら請求項を作成してくれたので大変助かる」

このように、特許の世界では特別な用語とその特有のニュアンスが日常的に飛び交っています。