食品メニューも「発明」になる? 〜スパゲッティナポリタンの知財的な一面〜
こんにちは。今回は、私たちにとってとても身近で、どこか懐かしいあの料理、「スパゲッティナポリタン」をきっかけに、食品メニューと特許の意外な関係についてお話ししてみたいと思います。
ナポリタン、皆さんはいつ、どこで食べたのを覚えていますか?
学校の給食、喫茶店のランチ、お母さんの手作り――。ケチャップの甘酸っぱい香りと、もっちりした麺の食感。ちょっと焦げたソーセージやピーマンが、なんとも言えないアクセントになっていたりして。子どもの頃に食べて「なんだか特別な味がする」と感じたあの記憶、大人になった今でもふと恋しくなることがありますよね。
ナポリタンは、ただのパスタではありません。昭和の洋食文化を象徴する、日本ならではの発明料理なのです。
スパゲッティナポリタンとは?
ケチャップで味付けしたスパゲッティに、ソーセージや玉ねぎ、ピーマンが加わったナポリタン。名前はイタリア風ですが、実は完全な日本生まれ。発案したのは、戦後の横浜・ホテルニューグランドの料理長、入江茂忠氏。駐留米軍の食文化にヒントを得て生まれたこの料理は、日本中の喫茶店や家庭に広がり、今や誰もが知る定番メニューとなりました。
食品メニューって、特許になるの?
ところで、このようなレシピやメニューが、「発明」として特許になることがある――そんな話を聞いたことはありますか?
実は、食品のレシピや調理法も、一定の条件を満たせば特許として保護されることがあるのです。
たとえば…
- 新規性・進歩性がある。つまり、これまでにない独創的な材料の組み合わせ
- 特徴的な調理方法。例えば、特定の加熱温度や時間、工程に特徴がある
などの条件がそろえば、特許として認められることがあります。
例えば、弊所では、ハンバーガーの特許の取得をお手伝いしたことがございます。
特許第6514402号
【請求項1】
生大根切断片の両側の断面には深さが6mm以上の波形状の凹凸が形成されており、
前記両側の一方の断面の波形状と他方の断面の波形状とが所定の角度で交差し、1枚以上の前記生大根切断片とパティとを重ねた根菜パティ片が、2枚のバンズの間に挟みこまれている
ことを特徴とする調理品。
つまり、網目状にスライスされた生の大根が挟まれたハンバーガーです。
網目状にすることで、ソースは浸透し易いですし、食べやすくなります。
大根のさっぱり感を加えた、美味しいハンバーガーです。

このような真新しい食品であれば、特許取得が可能です。
ナポリタンは特許になったのか?
残念ながら、ナポリタンそのものが特許として登録された記録はありません。しかし、ナポリタン風味の商品(スナック菓子やレトルトソースなど)には、その味の再現方法や工程が特許出願されているケースもあります。
飲食業界でも知財の視点を
飲食店にとって、ユニークなメニューは「お店の顔」。でも、料理のレシピそのものは著作権で保護される対象ではないため、工夫の中身を守りたいとき、特許による保護を検討するのも一つの方法です。
もちろん、すべてのメニューが特許になるわけではありませんが、「この味は真似されたくない!」と思ったときは、一度、弁理士に相談してみてもよいかもしれません。
ナポリタンのように、誰かの工夫やアイデアが、世代を超えて人々に愛される存在になることがあります。そんなアイデアを守るための「特許」という仕組みを、ぜひ身近なものとして感じていただければ嬉しいです。
本日も、最後までお読みいただきありがとうございました。