「審査請求」って争うこと?――いえ、特許の世界では“お願い”なんです

ある日の会話。

上司「この案件、そろそろ審査請求しといてね」
新人「……えっ、どこに請求するんですか?誰に? なんの?」
上司「あ、特許庁に。出願しただけじゃ審査されないから、お願いしないと始まらないのよ」
新人「あっ、そういう“請求”なんですね……!」

初めてこの世界に入った方が驚く用語のひとつに、「審査請求」というものがあります。
一般的に「審査請求」という言葉のイメージは、行政庁による違法または不当な処分に対して、国民が不服を申し立て、その処分の見直しを求める手続だと思います。

たとえば、行政に課されたぺナルティや税金について「その処分はおかしい」と思った場合などに、「審査請求」を行う。これは社会では割と不満や争論が付きまとう用語として解釈されています。

でも特許の世界では、ぜんぜん違う意味なのです。

特許の世界で「審査請求」といえば、
「特許庁の審査官の方、私の特許出願の審査を始めてください」という、とても丁寧な“お願い”に近い意味合いなのです。

出願しただけでは、特許にはなりません

実は、特許出願をしたからといって、それだけで審査が始まるわけではありません。
審査のスタートには「審査請求」という手続が必要です。

つまり、
「出願だけしておいて、必要なときに審査をお願いする」
という選択肢を残しておける仕組みなのです。

ビジネスの可能性を見ながら進めたいとき、資金や戦略を見極めたいときなどに便利な制度です。

「請求」と聞いて怖がらないでください

もし街中で
「この前、審査請求したんだよね」
という会話を聞いたら、特許に詳しくない方はちょっと身構えるかもしれません。

ですが、特許の世界ではごくごく穏やかな、前向きなやりとりを意味しています。

特許庁に「見てください」と丁寧にお願いして、はじめて審査官が発明の中身をチェックしてくれる。
それが「審査請求」なのです。
 初めて聞いたときに驚いたり、身構えたりしても、よくよく聞けば「なんだ、そういうことか」とホッとする。そんなギャップも、特許の世界のちょっとした魅力かもしれません。