弁理士は泣かない? いいえ、泣きます。

弁理士というと、冷静で論理的な職業というイメージがあるかもしれません。確かに、日々の業務は粛々と進め、特許出願の書類作成や審査官との応答も淡々とこなすことが求められます。しかし、そんな弁理士でも涙を流す瞬間があります。

それは、長い戦いの末に「特許査定」の通知が届いたとき。

ある案件での出来事です。依頼者は、長年研究を重ねてきた技術者の方でした。大手企業にはない独自の発想と情熱で、何とか特許を取得しようと奮闘されていました。しかし、審査は厳しく、拒絶理由通知が2度も届きました。私も依頼者と何度も打ち合わせを重ね、粘り強く応答を続けました。

そして、ついに届いた「特許査定」の通知。依頼者にその報告をした瞬間、電話口の向こうから震える声で「ありがとうございます…!」と絞り出すような言葉が聞こえました。長年の努力が報われた瞬間でした。

そのとき、私は思わず涙がこぼれました。これまでの苦労や依頼者の想いが一気に胸に押し寄せ、感情を抑えきれなかったのです。

弁理士は書類を作るだけの仕事ではありません。発明者の夢や努力を形にし、彼らの未来を支える仕事です。その責任の重さを感じながらも、こうした瞬間があるからこそ、この仕事を続けていきたいと思うのです。

「弁理士は泣かない?」 いいえ、泣きます。特許査定の通知を手にしたとき、発明者の喜びに触れたとき、その熱意に心を動かされたとき、私たちは静かに涙するのです。