見えない部分こそ手を抜かない

仕事とは、どのように取り組むべきものか――。これは、私たち専門家にとって常に自問すべき問いの一つです。

特許や知的財産の分野において、私たちが扱う案件の多くは、クライアントが気づかない細部にまで注意を払うことが求められます。書類の文言一つ、表現の選び方一つで、権利の強さが変わることもあります。しかし、それはクライアントの目には見えにくいものです。

例えば、特許明細書の作成において、単にクライアントの発明を説明するだけではなく、将来起こりうる競合との争いを見据え、広く適切な権利範囲を確保することが求められます。この際、文章表現を厳密に詰めることで、将来的なトラブルを未然に防ぐことができるのです。

ここで重要なのは、「見えない部分こそ手を抜かない」という姿勢です。クライアントの目に触れない部分であっても、手を抜けば、後になってその影響が現れます。専門家として、ごまかしてはいけない。クライアントを欺いてはいけない。見えないからこそ、きちんとやらなければなりません。

これは医療の世界では分かり易い話です。患者が診察室で見ているのは医師の表情や診断の言葉ですが、その裏には数多くの知識と経験、診察結果をもとにした適切な判断が求められます。検査データの読み取りを誤れば、患者は誤った治療を受けることになります。患者には見えない部分こそ、医師の技量と誠実さが試されるのです。

私たちの仕事も同じです。クライアントの見えないところで、いい加減な処理をしたり、専門用語で煙に巻いたりすることは絶対に許されません。誠実に、責任を持って仕事に向き合うことで初めて、専門家としての価値が生まれるのです。

手を抜かないことは、時間と労力のかかる作業です。しかし、それこそが私たちの仕事の価値であり、誠実な専門家としての責任なのです。クライアントに寄り添い、目に見えない部分であっても最善を尽くすことが、信頼を築く唯一の道ではないでしょうか。

これからも「見えない部分でこそ手を抜かない」姿勢を大切にし、皆様の知的財産を守るお手伝いをして行きたいと思います。